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シャフラーネクの『ボフスラフ・マルティヌー 人と作品』を読了

 ミロシュ・シャフラーネクの『ボフスラフ・マルティヌー 人と作品』をようやく読了。断続的に、半年くらいかかった。薄い本なのだけれど。
 マルティヌーはお気に入りの作曲家の一人で、大学時代に魅了されてから、二年に一度くらいの周期でときどき無性に聴きたくなる、いつもそばにおいているわけではないものの欠かせない存在。ところがいつまでたってもいまいち掴みどころがなく、全体像が見えてこないのは、第一に作品が400前後と膨大なことと、第二には、日本語で読めるまとまった資料がほぼ皆無であることが原因なのではないかと思っている。
 英語で読める資料もそんなには多くない。私が持っているのはこのシャフラーネクの伝記の英訳と、6つの交響曲を分析した大部の本のみ。ドイツ語のハルブライヒの研究書も持っているけれどまったく読めない。数年前に「発達障害の観点から見た」とかいう新しい伝記が出たのだけれど、なんとなくありがちな、牽強付会な論が長々と書き連ねられているんじゃないかというような気がして、買わずにしまった。でも、今はもう絶版で手に入りにくいようなので、買っておけば良かったかもしれない。
 このシャフラーネクの伝記は古典的な本でその筋では有名なのだけれど、作曲家存命の時期に書かれた本なので、今から見ると「未完」の作品であると感じざるを得ない。その点でリファレンスとしてはすでに失格に近い上に、記述が粗くて、伝記としても研究書としても中途半端な一冊であった。結構重要な伝記的事項がいろいろと抜け落ちているようで、パリで師事したはずのルーセルもほとんど出てこないし、なんか、マルティヌーをお世話した人や曲を演奏した人のことはたくさん出てくるが、作曲家としての発展に関係した師や同輩や弟子のことなどは出てこない。弦楽四重奏曲第5番の成立に深く寄与した、その他にもいろいろあったはずの弟子の女流作曲家カプラーロヴァーも、彼の手稿を持ってるとかなんとかの、一言しか言及されてない。
 著者はマルティヌーの友人か、取り巻きの一人だったのだろうか? 記述がいかにも浅いし、無用と思える賞賛の言葉などが多い。アメリカで大成功を収めたのが事実なら、その原因(「楽観主義がアメリカ人の気質に合致した」では説明にならないだろう)も分析してほしかった。そういう記述があってこそ、いまや聴衆にほとんど忘れられている理由も見えてこようというものだが・・
 そんなこんなで、あまり参考にはならなかった。翻訳して日本語で読める初めてのまとまったマルティヌー紹介の本にしたいとも思っていたけれど、ちょっとこれでは・・。もともとこれはチェコ語の本で、チェコ本国を早くから離れ外国で成功を収めた作曲家を、自国の誇りとして逆に紹介するという意図も込められていたのだろう。その点では重要な本だったのかもしれない。
 
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